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BPLを〇〇倍楽しく見るために その④

頑張ってシリーズ化している「BPLをもっと楽しく見よう」シリーズ第4弾です。
今回は「SOF-LAN」についての豆知識をご紹介します

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【1】IIDXの仕様とSOF-LAN

某柔軟剤の事ではなく、これはbeatmaniaIIDX特有のゲームシステムの1つです。beatmaniaに限らず、音楽ゲームには「ハイスピード」(HS、ハイスピ)と呼ばれる機能がついています。これはノーツの落下速度を上げるというものです。音ゲーをプレイし始めてどんどん腕前が上達してくると、ノーツの密度が高い譜面に挑戦する機会が増えてきます。ノーツの密度が上がってくると譜面がごちゃごちゃしてきて認識が難しくなってしまいます。


落下速度を上げるとノーツの間隔が広がってスッキリするかわりに、早いノーツに反応できるようになる必要が出てきます。多くのプレイヤーは上達してくるとノーツを押すことに対して余裕が持てるようになってきて落下速度が多少上がっても認識が追いつくようになってきますので、多くの人は上達するにつれて落下速度を上げていく傾向があり、最終的に自分が見切る事ができる一番早い落下速度に落ち着く人が多いです。


IIDXのHS設定をする上で他の音楽ゲームと異なるのは、「初期の落下速度が曲ごとに異なる」点が挙げられます。曲に表記されているBPMが早い程もともとの落下速度が早く、BPMが遅い程落下速度が遅くなります。その曲ごとの落下速度に対してHSをかける為、BPMが遅い曲をプレイした後に、BPMが早い曲を設定を弄らずにプレイするととんでもなく早い落下速度になってしまいます。


曲によっては曲中にBPMが変化してしまうものも存在します。この場合「曲の演奏中に落下速度が変化」してしまいます。BPM変化によってなにも弄らなければ落下速度が途中で変わってしまう曲を「ソフラン曲」と呼んでいます。もともとはプレイヤー間の通称だったワードでしたが、現在は公式的なワードになっています。

この速度変化に対応していく技術をギアチェンジ(通称ギアチェン)と呼び、プレイ中にハイスピードを弄る事によって対応をしていきます。


(ソフランの語源は「SOFT LANDING ON THE BODY」という曲から。この曲のBPMは80~318となっており、この頃は現在と異なり演奏中のハイスピード変更が不可能だった為、BPM318の箇所に合わせてハイスピを合わせる他無かった)


ソフランを大別すると「加速」と「減速」に分かれます。多くのプレイヤーは自分がノーツを見切りやすい落下速度や視界を設定してプレイをしています。よって「加速」に関しては、落下速度を下げない限りノーツを追う事はほぼ不可能となってしまいます。一方で「減速」に関してはノーツの間は詰まってしまうものの、ノーツ自体が追えないわけではないので完全に不可能というわけではありません。ここから先は様々なソフランに対して選手たちがどのようが技術を用いて対策をしているのかという事を説明していきます。


【2】ソフランを対策する技術① にらみ

まず、特別な操作を必要としない「にらみ」をご紹介します。これは「減速」に対して使われる技術です。その名の通り「画面をにらみつけるようにして見る」という技術(?)です。

減速によって引き起こされる弊害には

・ノーツが詰まりすぎて見えない

・ノーツが見えていても叩く順番が分かりにくい

・打鍵のタイミングが掴みにくい

といった要素が上げられます。これを解決する為に「視野を狭くすることによって、普段の落下速度を疑似的に視界に作り出すことで解決する」という手法です。


↓減速

(ファーストステージ 第5試合から era(step mix) (SPA) )

(古くから存在するソフラン曲として有名な「era(step mix)」はBPM180→90→180→90と推移する。両者の目つきの変化にご注目。1回目の低速地帯からBPM180に戻る時はギアチェンをする余裕が無い為、この低速地帯は睨むことで精度を維持する。中央下部のBPMの変化にも注目)


両者のレーンに注目してみましょう。NORI選手は「LIFT」という機能を使って判定ラインを本来の場所より高めの場所に置いています。また、両者とも「SUDDEN+」という機能を使ってレーンの上部を隠しています。この設定がそれぞれにとって一番ノーツが見やすい表示設定ということになります。これは基本的にプレイ中に弄られる事はありません。また、グルーヴゲージ(選手の顔の下に書かれている100%となっているゲージ、試合結果には一切影響はない)の右下に表示してある「2.50」「2.97」の数字がこの曲をプレイする場合に設定したHSになります。


落下速度が遅くなった場合は表示範囲を狭める事によって、疑似的に落下速度を早くすることが可能です。しかし、前述のとおりプレイ中に弄る事は基本的にできません。なんとか視界を狭めることができればある程度対応できるようになります。そのために使うのが「にらみ」です。


「にらみ」はIIDXのデバイスを用いる技術ではなく、睨んだ時の視界の広さや見る場所を探るというIIDX初心者でも可能な技術です。ですがどんな曲でも低速になったら睨めばいいというわけではありません。睨みを使う曲は主に、見えにくいだけで押しにくいワケではない譜面が多いです。曲そのものがLv8と高難易度ではないeraシリーズや、Lv12ではあるが低速部分はLv12ほどの難易度ではない「POSSESSION」などが該当します。また後述しますが、ギアチェンする余裕が無い、もしくはギアチェンする手間によって失う点数の方が大きくなる可能性のある曲も「にらみ」が使われます。


【3】ソフランを対策する技術② ギアチェンジと皿チョン

次は特別な操作が必要となってくる「ギアチェンジ」に関して解説します。これは、「加速」にも「減速」にも使われるテクニックです。IIDXは楽曲演奏中に「スタートボタンを押しながら白鍵盤」で落下速度を下げる事ができます。白鍵盤の代わりに黒鍵盤を押す事で落下速度を上げる事が出来ます。

押すごとに速度が変化する為、ギアチェンが必要なタイミングでは「どっちの鍵盤を何個分弄る必要があるか」を把握する事が重要になってきます。この操作はノーツを拾いながら行う事も可能です。

(ファーストステージ 第5試合から op.31 叙情(SPA) )

(両者の手元に注目。NORI選手の手元はスタートボタンに伸びておりギアチェンを試みているがNIKE.選手の手元は鍵盤の上のまま。代わりに目つきがかわっているのでギアチェンの頻度を少なくする代わりに睨む頻度を上げる事で対策をしたと想像できる。この曲は選手によってギアチェンの手法や頻度が大きく異なる曲でもあり本戦では複数回選曲されている)


もう一つのギアチェンの手法が「皿チョン」です。IIDXのハイスピードの機能の一つに「フローティングハイスピード」というものがあります。これは、「どの曲を選んでも自分が設定した落下速度に自動で設定する」というもので、選曲ごとに変わるBPMに対して毎回設定しなおす手間を省いてくれる機能です。この機能の重要な点として、「自動設定が行われるのは楽曲開始時のみ」という事です。つまり演奏中に発生した変化に対しては任意の操作が必要になってきます。そして、楽曲演奏中に自動調節を行う為の操作が「スタートボタン+スクラッチ」というコマンドになります。この「演奏中に素早くスタートを押しながら皿に触る」という部分から「皿チョン」と呼ばれています。

「皿チョン」は「鍵盤によるギアチェンでも操作数が膨大になりやすい程のソフラン幅を持つ曲」や、「ギアチェンの頻度が少なく何回も弄る必要がない曲」などに使われます。

(セミファイナルステージ 第1試合から Y&Co. is dead or alive(SPA) )

(とんでもない皿チョン技術によって鍵盤処理を得意とするUCCHIE選手に対して一気にリードを広げたCORIVE選手。スタートボタンを押しながら2番を処理し、5番7番と一緒にスクラッチを回し続ける事でBPM145から876までの超加速地帯をコンボを途切れることなく超えてみせた。視聴者は「CORIVE選手には8レーン目のスタートボタン専用レーンが見えている」と大喝采を送った)


【3】ソフランがもたらす醍醐味とは

これらの操作技術は結果に直結する「ノーツを拾う事」とは全くの無関係の動作ですが、その後にくるノーツを精度を維持したまま拾うようにするためには重要な技術です。この操作を加えるにあたっては、

・変化が起きる場所を把握する

・適切な操作を施す

の2点は最低でも必要になってくるため、SOF-LANのジャンルは楽曲に対するやり込みが光るジャンルと言えます。研究量やギアチェンのテクニックをもってすれば、ドラフト上位選手の牙城をも打ち破る事ができる可能性を秘めており、そういった光景が見られる可能性が高いという点は大きな醍醐味の1つと言えるのではないでしょうか。

(セカンドステージ 第4試合から PARANOiA~HADES~(SPA) )

(BPLのようなミスが許されないシーンにおけるギアチェンジはプレイヤーに大きくプレッシャーをかけてくる。チーム勝利にはこのカードでの2タテが必要な状況という極限状態に対して追い打ちをかけるようにハズレ譜面を引かされた大魔王ことDOLCE.選手。暗雲立ち込める状況の中、CORIVE選手渾身のプレイの前に大将戦をドローに持ち込まれ結果チームは敗北。百戦錬磨のDOLCE.選手であってもこういった事故が起こってしまうのがSOF-LANというジャンルの恐ろしいところ)

また、低速に対する耐性は個人差があったり、上で紹介した画像のように両者とも睨みつけている画になる場合もあれば片方は顔色ひとつ変えずに低速を捌いていたり。またギアチェンをしたりしなかったりという選手同士の対比も見ものです。

(ファーストステージ 第14試合から 卑弥呼(SPA) )

(超高難易度曲、卑弥呼(SPA)の低速に入った直後の1シーン。ここは余裕がある為手元に視線を落として慎重にギアチェンをするUCCHIE選手と、ギアチェンを使用しない為大きく余裕が持てていたあまりにグラフに目をやるDINASO選手。+5点が見えた時の心境はいかばかりか。この直後DINASO選手は低速地帯を睨むこともなく平然と超えており、「低速力」の高さが見て取れる。)


また、低速においてはギアチェンジをする場合には必ずノーツの取りこぼしが発生するというケースも存在します。低速力を駆使してにらんで耐えるか、取りこぼしは覚悟の上でその後にくるノーツを安心して拾う為にギアチェンをするか。こういった選択も駆け引きのひとつであり、取りこぼし覚悟の場合は如何に素早くギアチェンをして素早く鍵盤処理に戻れるかという部分で差が生まれます。

(ファーストステージ 第14試合から 卑弥呼(SPA) )

(上の写真から数十秒後のシーン。自選曲「」がストラテジーされた結果選ばれたのは冥と同じく最上位称号「皆伝」を得るために多くのプレイヤーが苦戦する「卑弥呼(SPA)」。最後の低速の入りは数ノーツを捨てなければギアチェンは不可能な譜面構成。低速地帯も非常にノーツが多いが認識できれば精度が出せる構成の為ほとんどの選手はギアチェンを使う。両者の手元とレーンに注目。UCCHIE選手はスタートボタンから既に手が離れておりノーツを拾う事に戻れている。対してDINASO選手はギアチェンの最中であり、この直後にノーツ回収へ復帰する。1秒にも満たない一瞬の差だがここのギアチェンだけでも数点の差が生まれている。この曲に勝利したことによってチームは引き分け以上が確定しファーストステージ2位通過となった。演奏直後のUCCHIE選手の咆哮にも注目)



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というわけで、今回はBPLでは数多くの試合の分岐点にもなっていた「SOF-LAN」の解説をしました。このように、多くのSOF-LAN曲は曲や譜面に対する理解と、どのようにソフランを対策するかという攻略、そして実戦でミスをしないようにする練習量がものをいうジャンルとなっています。ジャンル内の曲数こそ少ないですが、1曲1曲を重点的に対策していく必要があるのでプロ選手はもとより、我々一般的なプレイヤーでも時間をかけて攻略している人も多く、そういった面から毛嫌いされる事も多いジャンルとも思います。ですが、攻略した分対戦ではかなり強い武器となる為、今後CastHourでも実装されるであろうアリーナモードを意識して、1つ武器を仕上げてみるのもいいと思います。

今回はここまでとなります。ありがとうございます。



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